平成24年度  水力学授業ノート2
 
 

 


日時
要項
@
6/12-1
水の物性・燃焼の3要素
A
6/12-2
国際単位系・重力単位系
B
6/19-1
大気圧、絶対圧・ゲージ圧
C
6/19-2
水の流れ・水圧 
D
6/26-1
ベルヌーイの式
ベルヌーイの式の活用1
E
6/26-2
ベルヌーイの式の活用2
F
7/05-1
ベルヌーイの式の活用3
摩擦損失・圧力損失1
G
7/05-2
摩擦損失・圧力損失2
反動力・水撃作用
H
7/05-3
吸水高さに及ぼす因子・まとめ


背景色がこの色は
授業を受けて、理解し覚えてもらいたいこと

背景色がこの色は
授業を受けて、理解し覚えてもらい、活用できるようになってもらいたいこと

上記の二つは最低限のことで、授業を受けて、より多く理解し覚えて、活用できるようになってください。
知識が豊富なことは人生を豊かにしてくれます。

地球

宇宙船「テラ」号



地球の大きさ



top へ
<地球の半径>
 地球は、完全な球ではなく、赤道付近が少しふくらんだようなだ円体です。赤道における半径は6,378kmで、北極・南極における半径は6,357kmです。
でも、この差(6,378−6,357)=21kmで、 21/6378×100=0.33%で、
半径10cmの地球を描いたら、その差は10×0.33/100=0.033cm=0.3mm
すなわち鉛筆で描く線より細いわけだから、地球はコンパスを使ってまん丸に書くのが正解。
大気圧



top へ
 地球の空気層の厚さ

 地球の形状は球形、その半径は6370kmある。そしてその上に空気の層を纏っている。で、その分厚さは?約50kmである。それは成層圏の上部と言われるところでそこの空気の薄さは地上部の約1/1000である。すなわち地球の半径の0.78%、もし半径10cmの円を描いたらとしても空気の層は0.8mmで1mmにもならない。それほど薄っぺらい存在である。
 いま、1cm×1cm底面を持ち、空気がなくなる上空(約100km上空=空気の濃さは地上付近の100万分の1位)まで伸びている空気の柱を考え、その中の空気の質量を測るといくらになるか。

 答えは1.033kgである。上のような気中の質量を直接測ことは不可能であるが間接的に測る方法がある。



    まず、水銀を満たした容器を図のように用意する。
    また、管の片方が閉じられている約1mの長さのガラス管を用意する。
    このガラス管に水銀を満たし、水銀が漏れないように指で押さえて、用意した水銀溜めの水銀の中まで入れて指をそっと緩めるとガラス管の中の水銀のいくらかは水銀溜めに出るが、ガラス管内の水銀は全部出るのではなくある高さまで下がるとそれ以上は下がらなくなる。
    この実験はガラス管の断面積に関係なく水銀柱の高さは同じで76cmであるが、解りやすくするために、管内面積が1cm2のガラス管として話を進める。

    この中にある水銀の質量=水銀柱の体積×水銀の密度
     =1cm2×76cm×13.59g/cm3
     =1033g=1.033kg
    この1033gの水銀に重力が働き生ずる力は
     F=mg=質量×重力加速度=1.033[kg]×9.8[m/s2]=10.13[N]
    この力が1cm2にかかっているので
     P=10.13[N/cm2]=10.13×10000[N/m2=Pa]
      =101300[Pa]=1013[hPa]=101.3[kPa]=0.1013[MPa]

 このように、空気柱の中の空気の質量は測れなかったが、水銀を使うことで測ることが出来る。
水銀の密度は13.59g/cm3で、大気圧に相当する水銀柱は76cmである。これを76cmHgと表す。
 水の密度は1.0g/cm3であるから、大気圧を水柱で表すと10.33mAqとなる。Aqは(aqua)で、水を意味する。ここでは水柱を意味する。

これらから
大気圧=1013hPa=0.1013MPa=101.3kPa
   =76cmHg=10.33mAq=1.033Kg/cm2
と、表すことが出来る。
 大気圧をいろいろな単位系や単位表示の一覧
大気圧
表示単位系
主として使用しているところ
1013hPa
国際単位系
気象学で使用
0.1013MPa
国際単位系
消防や科学、工業で使用
101.3kPa
国際単位系
科学や工業で使用
76cmHg
慣例表示
物理で使用。水銀柱
10.33mAq
慣例表示
消防や物理で使用。水柱
1.033Kg/cm2
重力単位系
昔、消防や工業で使用
 [Kg]は重力を表し、質量を表す[kg]と異なることに注意。


 ところで、水は吸い上げられて10m上っているのだろうか。水銀は吸い上げられて76cm上っているのだろうか。見た目にはそのように見えるがそれは正しくない。

 水銀柱で言うと、ガラス管の中の水銀は表面が真空のため水銀柱を押し下げる力は0である。一方水銀池の表面には大気圧=76cmHgが掛かっている。「その力によって、ガラス管の水銀柱を押し上げている」というのが正しい表現である。

 これを水柱で言うと、ガラス管の中の水は表面が真空のため水柱を押し下げる力は0である。一方器の水面には大気圧=10.33mAq が掛かっている。「その力によって、ガラス管の水柱を押し上げている」というのが正しい表現である。

 ポンプ車は水を吸い上げるためでなく、吸管内の水を押し下げる力を弱くするために真空ポンプを働かすのである。そうすると、水利の水面を押す大気圧の力で水が押し上げられてくる。でも、いくら優秀な真空ポンプを用いても=完全真空を作れても、水は理論的には10.33m以上吸い上げること(正しくは、押し上げてもらうこと)は、不可能である。これが、いわゆる「吸い上げ」の理論的限界高さといえる。
 消防車の真空ポンプは、高真空を作ることが目的ではなく、性能は犠牲にしても、いかに早く吸い上げるか(押し上げてもらうか)が勝負なので、排気量を大きくして、最高到達は犠牲にしている。だから、最高到達真空度は完全真空ではない。そのために、真空ポンプの到達真空度によって、吸い上げ(押し上げてもらう)高さは10.33mより小さくなる。


国際単位系が常用になるまでは消防では重力単位系を使っていた。
圧力(水圧)を、例えば 1.0[Kg/cm2] のように表示し、「圧力は1キロ」と呼んだ。
絶対圧

 と

ゲージ圧




top へ
絶対圧とゲージ圧



消防を初め工業界においても圧力の表示は、ゲージ圧表示を使用している。
気象関係・気象学で使用されている気圧(例えば1013hPaの表示)は絶対圧表示である。
 最高真空度 −85kPaの消防ポンプが吸水できる理論上の最高の高さは何mか。

 完全真空は −101.3kPa で吸い上げ可能高さは10.33m である。

 10.33×(85/101.3)=8.67m=8.7m

                     答8.7m 
高度と気温・気圧・沸点の関係

top へ
高度と気温・気圧・沸点の関係
高度と気温・気圧・沸点
高度(m)気温(℃)気圧(hPa)沸点(℃)備考
015.0 1013.3 100.0 海面 0m
20013.7 989.5 99.3
40012.4 966.1 98.6
60011.1 943.2 98.0
8009.8 920.8 97.3
10008.5 898.7 96.6 六甲山 931m
12007.2 877.2 96.0
14005.9 856.0 95.3
16004.6 835.2 94.7
18003.3 814.9 94.0
20002.0 795.0 93.3
22000.7 775.4 92.6
2400-0.6 753.6 92.0
2600-1.9 737.5 91.3
2800-3.2 719.1 90.7
3000-4.5 701.1 90.0
3200-5.8 683.4 89.3
3400-7.1 666.2 88.6
3600-8.4 649.2 87.9
3800-9.7 632.6 87.3 富士山 3776m
4000-11.0 616.4 86.6
8800-42.2 316.7 70.4 エベレスト 8848m
10000-50.0 264.4 66.3 国際線飛行高度
11100-56.5 223.4 -対流圏界面
20000-56.5 54.7 34.5
30000-46.5 11.7 9.3
47400-2.5 1.1 -成層圏界面
「理科年表・気象」より
水の流れ方

top へ
水の流れ方

水の流れ方
流れ方
流量
速度分布
平均速度
摩擦損失
レイノルズ数
層 流
少ない
 
Vmax×0.5
速度に比例
2100以下
乱 流
多い
 
Vmax×0.8
2乗に比例
4000以上


水の流れ・速度分布

    レイノルズ数(Re)=
    D×V×ρ

    μ
    m×m/s×kg/m3

    kg/m・s
    = [−]
D:管内径[m]  V:流速[m/s]  ρ:[kg/m3]密度  μ:粘度[kg/m・s]
    レイノルズ数 = 
    D×V×ρ

    μ
    L×(L/T)×M/L3

    M/(L×T)
    = [−]

    L:長さ  M:質量  T:時間  の各次元を表す
 レイノルズ数のように、次元式で表すと、すべての次元が約されて消える項を、無次元項と呼ぶ。使用単位が異なっても単位を整えて数値を入れて計算すると同じ数値になる。
 なお、レイノルズ数と層流、乱流の定義が、研究者によって異なった数値として発表されている。ここでは一応の目安として、理解してもらいたい。
水流連続の式



top へ
水流連続の理・水流連続の式(流体が液体の場合成り立つ)

 Q =  A11 = A22
 
 Q:流量[m3/s] A:管断面積[m2]  v:速度・流速[m/s]   


水圧

top へ
水深と水圧の関係
大きな水槽の中の水深h[m]のところにある底面積A[m2]にかかる水圧はいくらになるか。

これは、すでに気柱で述べたように、
水柱の容積Vは
 V=底面積×水深=A×h [m3]
になる。
この中に入っている水の質量mは
 m=容積×水の密度=A×h×ρ [kg] 
となる。
この容積の水によって生ずる重力Fは
 F=A×h×ρ×g [kg・m/s2=N]
 
底面の単位面積あたりの圧力
 p=重力/底面積=Ahρg/A=ρgh [N/m2=Pa]

 p=ρgh=1000×9.8×h=9800h[Pa]=0.0098h [MPa]
と表わせる。
 p= ρgh  [Pa]

 p =0.0098h [MPa]

 h=102p [m]
と表わせる。
これは水深h[m]とその場所における圧力p[MPa]の関係式である。

A:底面積[m2]  h:水深[m]  ρ:水の密度=1000[kg/m3] 
 いま重力式水槽から配管されたスプリンクラーがある。そのテストコックの横の水圧計は0.088[MPa]を示していた。水槽の水面は圧力計から何m上にあるか。 
 h=102p=102×0.088=8.97=9.0 [m]

 答 9.0m

ベルヌーイの定理



top へ
     ベルヌーイの定理

    ベルヌーイの定理とは、流体の有する機械的エネルギーの収支式である。
     p1

    ρ
     v12

    2 
    gz1
     p2

    ρ
     v22

    2 
    gz2  [J/kg]
     p:圧力[Pa]  ρ:密度[kg/m3]  v:流速[m/s]  
     z:基準面からの高低差[m]  g:重力加速度[9.8m/s2]
      流体1kgあたりの有するエネルギーを[J]であらわしている。

    ベルヌーイの式の
     第1項目は圧力エネルギーの項、
     第2項目は運動エネルギーの項、
     第3項目は位置エネルギーの項、

    と呼ばれる。
圧力E.の項



top へ
圧力エネルギーの項
圧力による仕事は
「する仕事」=(圧力)×(体積変化)=(圧力)×(断面積)×(動かした距離)
  =p×A×ℓ [kg/(m×s2)][m2][m]=[kg×m2/s2]=[J]
で表されます。
また、この体積内の水の質量は
 「水の質量」=m=体積×密度=A×ℓ×ρ [m2][m][kg/m3]=[kg]
で表されます。
ベルヌーイの式では単位質量あたり(水1kgあたり)のエネルギーと定義されていますので
圧力
エネルギー
の項
「する仕事」[J]

「水の質量」[kg]
p×A×ℓ 

A×ℓ×ρ

ρ 
=[J/kg]


教科書の図では 質量m=Aℓ[kg] となっていますが
正しくは  質量=ρAℓ[kg]です。

 p

ρ
 Pa

kg/m3
 kg/(m×s2

kg/m3
2

2
kg×m2

2×kg
/kg

 Pa=N/m2=kg×m/(s2×m2)=kg/(m×s2

 J=kg×m2/s2
運動E.の項



top へ
運動エネルギーの項
2

2 
(m/s)2

− 
 m2

2
kg×m2

2

kg 
J×

kg 
=[J/kg]
位置E.の項



top へ
位置エネルギーの項

gz
 m

 s2
×m=
 m2

 s2
kg×m2

2

kg 
J×

kg 
=[J/kg]
水頭



top へ
水頭 Water Head
エネルギーを長さの単位[m]で表す。
 p1

ρ
 v12

2 
 gz1
 p2

ρ
 v22

2 
 gz2  [J/kg]

 また、この式の両辺を重力加速度gで割ると
1

ρg
12

2g
+ z1 =
2

ρg
22

2g
+ z2  [m]
  エネルギーの項が、長さの単位[m]であらわされている。このような表現をWater_Headと呼び、日本では水頭と呼ぶ。

各々の記号は、p:圧力[Pa]  ρ:密度[kg/m3]  v:流速[m/s]  
  z:基準面からの高低差[m]  g:重力加速度[9.8m/s2]
ベルヌーイの式



top へ
ベルヌーイの式の応用1
大きな水槽があり、水槽の壁面に水面より10mの所に孔を開けた。この孔から飛び出す水の流速は毎秒何mであるか。求めよ。

このような問題を解くのにはベルヌーイの式が役立つ。
 p1

ρ
 v12

2 
gz1
 p2

ρ
 v22

2 
gz2  [J/kg]
水面を1の位置、水が飛び出している所を2の位置として、ベルヌーイの式を当てはめる。
大きな水槽なので、水面の降下速度 v1≒0とみなせる。
水面にかかる圧力も、孔から飛び出す水にかかる圧力も、どちらも大気圧であるから、p1=p2である。
これらを式に当てはめると。
 p1

ρ
 v12

2 
+ gz1 =
 p2

ρ
 v22

2 
+ gz2   [J/kg]
結果として、3項は消去できる。

 v22

2 
 = gz1 − gz2  [J/kg = m2/s2

となり、
 v2 = 2g(z1 − z2)  [m2/s2
となり、
 v2 = 

√2g(z1 − z2)  
  [m/s
ここで、(z1 − z2) は、水面と孔の高低差(水深)なので h[m]とすると
また、式を一般化するためにv2の添え字を取ると、
 v = 

√2gh 
  [m/s
この問題では水深h=10mなので、
 v = 

√2×9.8×10 
 = 

√196
=14[m/s
となり、水深10の孔から飛び出す水の速度は14m/sと求められる。  

 v = 

√2gh 
  [m/s
なお、この式は水深と飛び出し速度の関係式なので、水槽でなくてもダムに開けた水門からの飛び出し速度も計算できる。ただ、ここでは触れていないが流水抵抗のために実際の値は少し遅くなる。

大きな水槽があり、水槽の壁面に水面より10mの所に孔を開けた。この孔から飛び出す水の流速は毎秒何mであるか。求めよ。
 v = 

√2gh 
  [m/s
この問題では水深h=10mなので、
 v = 

√2×9.8×10 
 = 

√196
=14[m/s
となり、水深10の孔から飛び出す水の速度は14m/sと求められる。